文様1=桜 移ろう四季を五感で受け止め、季節を写す「日本の文様」

いよいよ今年も桜のシーズンです。 

長い冬を越え、春の到来を告げるかのように咲き誇る桜には、心浮き立つ特別感があります。わずか2週間ほどの儚い姿を愛でるため、桜の下に集い、食事やお酒を楽しむ“お花見”は日本特有の文化でしょう。 

「田の神様をお迎えするために桜の木の下で料理や酒を用意し、豊作を祈願したのがお花見のルーツと言われています」(野口ちえこ) 

 文様の1回めは、「桜文(桜の文様)」のお話しです。 

四季のある日本では、古より、めぐる季節と共に変化する豊かな自然を五感で味わってきました。着物や帯にも、折々に咲く花や草木の繊細で豊かな造形が、文様として使われています。植物文様は世界中の国にありますが、四季の変化が豊かな日本の文様はバリエーションの多彩さが特徴。そこには様々な意味や願いが込められています。

 「桜柄の着物というとピンクや白のかわいらしいイメージですが、寒色系の大人っぽい色合いのもの、大胆でモダンなデザインのものなどバリエーションは豊か。年齢を問わず身につけることができる文様です」(野口ちえこ) 

古来、桜は「田の神が宿る木」と信じられていました。 

サクラの「サ」は穀物=田の神、「クラ」は場所を表し、桜の文様には「繁栄や豊かさ」の願いが込められています。また芽吹く季節の春を想起させる桜は、幸先の良い「物事のはじまり」の意味を持つと言われています。 

「桜柄にも、枝に咲く姿、満開の桜花、はらはらと散る花びらを描いたものなどさまざま。花の種類も八重桜(やえざくら)、山桜(やまざくら)、枝垂れ桜(しだれざくら)と多彩です」(BARRIQUE TOKYOショップ・キューレーター&アーティスト 野口ちえこ)。 

 「桜文様は、日本の伝統文化の中でも特別に愛されているモチーフ。桜は春を代表する花ですが、写実的に描かれたものでなければ、季節を問わず身につけることができます。吉祥を願う桜の文様を身近に置くことで、移ろう四季の美しさ、そして日本文化の奥深さに触れてみませんか」(野口ちえこ) 

参考文献 : 「きものの文様」(世界文化社)、「きもの文様図鑑」(平凡社) 

 

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