●文様編「クイズに挑戦! 夏の暑さを吹き飛ばす!“水の文様”を紐解こう」
日ごとに太陽が強さを増し、夏の到来を感じる季節になりました。
「流水文(りゅうすいもん)」や「青海波(せいがいは)」など、
流れる水や波を意匠化した文様は涼やかさを感じる夏らしいモチーフです。
時には荒々しく、時には穏やかに姿を変える水。形の定まらない自然の風景までも文様にして愛でる、日本人らしい図案と言えるでしょう。
今回は、夏を爽やかに過ごす「水」にまつわる文様クイズを楽しんでくださいね。
第1問
能楽の観世宗家が定式文様とした水の文様、「観世文(かんぜすい)」はどちら?
--- A ---
--- B ---
答えは、Aです。
観世水は、水流と渦を図案化した渦巻文の一つ。能楽観世流の謡本や扇、装束などに使用されるため、この名がついたといわれています。
上下にも左右にも広がる優れたデザイン性が特徴で、現代の着物や帯にも広く使われています。
流れる水は清らかであることから「清廉」「正義」を表し、途切れることのない水の流れに「永遠性」や「幸福」の願いが込められています。
水の文様は、基本的に季節を選びませんが、観世水が単独で描かれている場合は夏に用いるのがおすすめ。
第2問
日本の伝統的な自然文様。実は古代ペルシャ生まれは「光琳波」「青海波」のどちら?
--- 光琳波 ---
--- 青海波 ---
答えは、「青海波」です。
発祥は古代ペルシャのササン朝と言われ、飛鳥時代にシルクロードを経て伝来しました。
雅楽「青海波」の装束に用いられたことから、この名がついたとされ「源氏物語」の中にも光源氏が「青海波」を舞う情景が描かれています。
多くの日本の伝統工芸品に登場するなど、日本文化と深い関わりのある文様ですが、エジプトをはじめ世界各地で愛されているデザインなのです。
「光琳派」は、江戸時代の画家・尾形光琳の「紅白梅図屏風」に描かれた波をモチーフにした文様です。
↑同心円の一部が扇状に重なり合い、波が大海へ無限に広がるように連続する「青海波」には、未来永劫の幸せと平穏な暮らしへの願いなどが込められています。
第3問
波をモチーフにしたポシェット、この文様の名前は「波頭」「波の丸」どちら?
答えは「波頭」です。
躍動感ある波を描いたもので、「立浪」「荒波」と呼ばれることもあります。
さまざまに変化する波の姿は、古くは万葉の時代から数多くの歌に詠まれ、浮世絵や屏風絵の世界でも愛されてきたモチーフ。波を意匠化した文様も多彩で、波頭、白波、立浪、片男波など楽しい名前がつけられています。
寄せては返す波は果てることがないことから、「永遠」「不滅」「長寿」「誕生」を意味する吉祥文様なのです。
「波の丸」は、波の形を円形にまとめた丸文の一つです。
いかがでしたか?
水は命をつなぐ大切なもの。「洗い流す」イメージから、苦難や災難を流す「厄除け」の意味もあります。
目にも涼やかな水の文様を身近に置いて、暑い夏を乗り切りましょう。
参考文献 : 「きものの文様」(世界文化社)、「きもの文様図鑑」(平凡社)